僕と仲良くなりたい人は、自分の利益を考えている人ばかりだった。
僕を利用して、いい先生を紹介してもらうとか、演奏家や音楽大学、ソロコンテストを主催している楽器屋―――。
とにかくコネをつくりたいという人たちばかりだ。
そんな華村学園には、同じように英才教育を受けている人も少なくはない。
楽器を十分に習っている人が多いに決まってる。
それでも、僕がいることでレギュラーになれないと悪態をはく同じパートいる。
確かに、吹奏楽部にレギュラーとかレギュラー外とか、本来ならば存在しない。
しかし、いざコンクールやコンテストとなれば、人数制限があるのは仕方がないことだ。
争われる音楽。
戦場となるコンクールの舞台。
僕はそれを痛いほど知っている。
だからコンクールに出たいって、彼らがいうのであれば、僕は迷わずにその席を譲るだろう。
「渡辺ー!!早く練習しようぜ!」
「明!あんたケースちゃんと片付けなさい!」
二人の声で、僕は我に返った。