「ねぇ、雪やで。」
「ホンマやぁ・・・」
若いカップルが空を見上げ、
降り始めた雪に笑みをこぼした。
私はそんな二人を見て立ち止り、
つられて空を見上げた。
ホンマ・・・ 雪・・・
ちらちらと降り出した雪に
私は遠く愛しい人を思い出した。
大和・・・
今日はクリスマスイヴ、
街は幸せそうな恋人たちでいっぱいだ。
「ねぇ、早く行こ。
予約の時間に遅れちゃう。」
「そやな、行こう。」
雪に目を取られていた二人は
どこかレストランでも予約してるのか、
足早に去って行った。
羨ましいなぁ・・・
私も大和とああやって手を繋いで歩きたい。
「はぁーっ・・・」
大和、逢いたいよ・・・
私は遠く新潟にいる大和を想い、
一つため息を吐いた。
私の彼、高原大和(タカハラ ヤマト)は
遠い新潟で暮らしている。
転勤で新潟に行ってしまったんだ。
遠距離恋愛をして2年、
年に何回も逢えない二人、
由梨の寂しさは日に日に募るばかり。
特にこんな特別な日、
クリスマスイヴは恋人と過ごしたいもの、
それでも由梨は我慢した、
我慢するしかなかったんだ。
新潟に転勤になったのは
私のせいでもあるんだけどさ、
それでも逢えなさ過ぎだよ・・・
大和が転勤になったのは由梨が理由だった。
当時、また神戸勤務だった大和は、
会社の上司に由梨のことを知能の低いギャルと
馬鹿にされ上司に噛みついた、
それで大和は新潟に飛ばされたのだ。
誰かが恋人がサンタクロース
なんて言ってたっけ?
そんなの絶対嘘だ!!
クリスマスに彼氏がサンタになるはずがない、
仕事の融通が利くはずがない!!
恋人はサンタにはなれない!!
「はぁーっ・・・」
プレゼントなんかいらない、
そばにいてくれればいい。
誰かがそんなことも言ってたなぁ~
あれは本当そうだよ。
昔は『プレゼントほしいやん!!』
と思ったけど、
今はそんなんどうでもいい。
ただそばにいてくれればいい、
ギュッと抱きしめてくれたら、
それでいい。
それだけでいいのに・・・
♪♪♪♪♪
すると私の携帯が鳴った。
明美・・・
ディスプレイに映ったのは、
私の高校時代からの親友明美だ。
「はい?」
「あっ、由梨?」
「あっ、黒?」
「だれが黒やねん!!
そう呼ぶんはエロ大和だけで十分や!!」
そう、黒とは大和が明美に付けたあだ名。
何故かというと、明美は顔グロだからだ。
私が色白だから白ギャル、
明美が顔黒だから黒ギャル、
大和は私たちをそう呼んでいた。
「今からさご飯行かへん?」
白ギャルかぁ・・・
そう呼ばれてた頃が一番幸せだったなぁ・・・
毎日のように大和にメールして、
偶然を装って大和に逢いに行ったり、
いろいろあったけど、幸せだった。
私はショーウィンドーに映る自分を見た。
白ギャル・・・
そろそろ私も卒業かな・・・?
黒髪にして大人の女性になりたい。
でも大和が許してくれへんねよなぁ・・・
『絶対に黒髪にするな!!』って。
なんか黒髪にすると
だいぶイメージが変わるみたいで
それを大和は良く思わない。
一度、由梨は黒髪にし、小綺麗な格好をしたことがあった。
その時のまわりの反応はすごくて、
すれ違う男達がみんな振り返るほどだった。
だから大和は由梨に白ギャルでいるように命じたのだ。