3年に上がりクラスのみんなも受験のことでそわそわしていた。
私立は絶対いやだとか、今の実力じゃ目指す高校には行けないなど…
でも、決まって「もしだめでも私立に行けばいいか」という言葉も聞こえる。

「こっちは絶対私立には行けないんだよ…」

そう胸の中で呟きながらひたすら勉強をした。
もちろん部活も最後の年だから気合いが入る。吹奏楽なので他の部より引退がやや遅い。
家に帰ると気が重くなる…なるべく家に帰るのは遅くなるよう、部活が終わった後は近所の図書館で勉強する。

「愛さんは希望校C高校よね?今のままじゃちょっとギリギリかな…ランクは下げなくてもいいけど…私立はどうするの?空欄だけど…」
「私立は行きたくないんです…国立の併願ってできますか?」
「国立ねえ…あそこは推薦がほとんどで、一般はほんとに狭いのよ?私立も受けてもらうし、期間も短いから大変よ?」
「…お願いします…」

狭き門でもいい、とにかく私立だけは避けないと…

「お母さん…私立には絶対行きたくないんだ…だから国立受けようと思うの。でもね、私立も絶対受けろって先生が言うんだけど…」
「ん?それぐらいいいわよ。頑張りなさいね。」
「もし私立にしか行けなかったら…」
「大丈夫よ。その時はその時だから。」

にっこり笑う母に絶対いい知らせをしよう…

 私立の入試は母と同じ看護科を受けた。万が一行くとなれば自分の将来の夢が叶うところがいい。
入試の手ごたえは十分あった。あとは国立・公立のみ…

 私立の合格発表を前に国立の入試は始まった。倍率は40倍…
 
「愛さんなら大丈夫よ。頑張ってらっしゃい。」
そう声を掛けてくれたのは部活の顧問だった。この人は厳しいけれど間違ったことは言わない…
入試の内容はよく覚えてないが、絶対落ちない・落ちてない。それだけしか考えなかった。

 結果は私立・国立ともに合格。
これで私立には行かなくていいんだ。公立はもういいかな。そんな思いだけがグルグル駆け巡った。

「お母さん、国立受かったから公立はもういいかな?」
「何言ってんのよ。愛は公立に行きたかったんでしょ?あそこは部活が強いって…後悔するから受けてきなさい。」

後悔か…そうだよね。私にはもう余裕があるもんね。
道はたくさんあるほどいい…