この状況を把握するために何か手がかりを得ようと、目の前にいる香里奈を見つめてみた。
「ちょっと確認なんだけど」
「何?」
「今まで香里奈とセックスしてたんだっけ?」
「しず、さっきから何言ってるの?何か面白いことでも思いついたの?」
香里奈に笑われて、どこかはぐらかされているようにも感じたけれど、“たった今まで香里奈とセックスしてた”という動かし難い状況証拠がある。
それは、千秋の中に挿し入れたと思っていた指が、今は香里奈の中にあったからだ。
伝わってくる中の暖かさや濡れた感じは変わっていないのに、中指と薬指を使っていたはずが、なぜか中指だけが香里奈の中に残されていた。
あまりにも突拍子もない出来事が起きると、人は逆に冷静になるのかもしれない。
行き過ぎたパニックが、普段通りの行動しかできなくさせているのかもしれないが。
とにかく、今の状況に合わせて行動してみようと、しずくは決めた。
それしか思いつかないし、そうしているうちに何か手がかりが掴めるかもしれないからだ。