ただ先程の腕時計のことと同様に、ちょっと考えれば自分が店長だったことも、店長としてどう動いて仕事をするべきかも思い出せる。


こんな風に違いがあった時、多少のタイムラグは生じても、まごつきながらも対処はしていけそうな気がして、しずくは少し落ち着いた。


今日の予定は……と少し考えを巡らせると、特別には何もなさそうだけれど、年末だしクリスマス前で予約はいっぱいだと思い出した。




「野田ちゃん、今日も予約いっぱいで忙しくなるから、朝礼の準備よろしく」

「わかりました!」




最近、シャンプーの他に、カラーリングも任されるようになった野田は、気合いの入った返事をすると、パタパタとフロアに出ていった。


野田に頼んだ朝礼の準備とは、今日の予約状況と、お客様の名前とメニュー、担当者指名の有無の確認に使う予約票と、お客様カルテを用意しておくだけのことだ。


あとは、スタッフ個人の売上目標と売上見込みの数字を一人ずつ言って朝礼は終わるのだけど、忙しい時期だとこの朝礼の時間ですら惜しい。


忙しい日には、注文していた不足商材を業者が持ってきたりして、余剰人員なんていないから、接客の合間に検品したりと、とにかく現場がばたつくのだ。