「けど不思議。そっちでは、しずと香里奈は付き合ってないんだね」
「そうなんだ。千秋っていう子が恋人だから」
「だから千秋って呼んでたんだね」
「うん」
「けど……香里奈とセックスしたのはなんで?」
「それは……こっちの世界の自分の記憶も感情もそのまま残ってたからかな」
「え?どういうこと?」
それからしずくは、自分の中に混在する『二つの記憶と二つの感情』について話した。
「それも不思議だね」
「本当、不思議な感覚だよ」
「じゃあ今のしずの半分は、今までのしずってことだよね」
「そうなるかな」
「そっかー」
そう言った後にしばらく何か考えてる様子だった香里奈は、何か思いついたような顔をしてた。
「ま、いっか」
「え?」
「考えたってなるようにしかならないし。楽しもうよ」
香里奈が出したすこぶるシンプルな答えは、突拍子もない答えに思えた。
確かに考えても何も出来ないかもしれないけれど、開き直って楽しもうと言う香里奈が、しずくには頼もしく思えた。