今、存在している世界がどんな世界であっても、誰かと繋がっていたい。
更には、その繋がっている誰かともっと密に絡み合いたい。
ただ水面に浮かんで流されるしかない浮草同士が、そうであるように。
繋がる方法なんて想い合うことしかなくて、それを密にするには、もっと知り合うしかない。
一人迷い込んだ異世界で、しずくはそう感じていた。
「しず」
呼ばれて香里奈を見ると、思いもよらず愛しさが込み上げた。
と同時に、この世界の香里奈に名前を呼ばれるのも、思えば不思議な感じがした。
ここにいるのは確かに香里奈だけれど、元の世界の自分を知る香里奈ではない。
とすれば、ここの世界の住人ではない“今の自分”と香里奈は、果して恋人といえるのだろうか。
とは言え、自分の中には“恋人だった自分”の記憶も想いも残っているから、まるきり恋人ではないという訳じゃない。
まるで禅問答のようなやりとりが、頭の中で繰り返される。
このまま自問自答を繰り返しても答えにはたどり着けない気がして、夢ならば早く覚めて欲しいと願った。