「ちょっと痛くても我慢して」




しずくは、香里奈に対してそんな言葉を発しているのが自分だとは信じられないような気持ちの下で、別の自分が残していた欲望が満たされていくのを感じていた。


香里奈に我慢を強いて、それを受け入れてもらえることが、まるで自分への愛の証であるかのように感じていた。


香里奈は、二本の指が掻き回す奥底で、何かが目覚めたのだろうか。


強すぎる愉悦に苦しみ悶えているようにも見える。




「平気?」

「まだ痛い感じもするけど」

「良くなるまで付き合って」




強引だな、と思ったけれど、しずくはあえてもう一歩踏み込んだ。


一度はこうして痛みを越えなければ、その次にある極みにはたどり着けない。


大切にすることと、いつまでも壊れ物を扱うように我慢して抱くのは、意味合いが違う。


それに、未知なる扉を一緒に開けて進みたいと望むのは、愛する者に対して当たり前に持つ希望でもある。


何より今の孤独と不安に堪えるには、抱き合っている香里奈の存在が必要だった。