例えばこれがパラレルワールドだとして、今までここに“自分とは別の自分”が存在していたとしても、これからの選択は“今の自分”に託されている。


何故かそう思ったしずくは、あえて何かに逆らうように、香里奈の制止を振り切ろうと、試みたくなった。




「しず?」

「今日だけ」

「えっ!?……嫌だよ」

「お願い」




香里奈が答えられずに躊躇してる間に、しずくの舌先はもう、香里奈の中に沈められようとしていた。




「今日のしず、変だよ?」

「分かってる」




変というより、全てがすっかりまるごとすり替えられてることに、香里奈はまだ気づいていないようだ。


正確に言えば、今、しずくの中には頭の中の記憶と、胸の中の感情に、別の二つずつのものがあって、実際は四つのものが混在している。


本当はきっと、パニックを起こしているのかもしれない。


今のしずくはイレギュラーで、しずくらしくなくて当然といえば当然なのだ。