「飲み会」自体は二時間ほどで終わりましたが、男性陣はこの雪の中、また二次会に繰り出すと言うのです。


「鷺澤は?」


あなたの同僚の方はあなたも誘いましたが、あなたはそれをお断りしていましたね。


結局私と主任、残りのメンバーと言う組み合わせで、私たちはお店の前で別れることになりました。


「美雪さん、駅まで一緒に。送っていくよ」


考えたら男性と二人きりで外を歩くのははじめてのことで、行きとは違った緊張に


私はドキドキと高鳴る心臓を宥めるのが大変でした。


でもこれで駅までの道のり、いつでも手袋をお返しできるのだと思い直しました。



主任は私にたくさん笑顔で楽しい話を聞かせてくださいました。


普段の仕事の雑談のような気軽さで。


私はぎこちなく返すのに精一杯。


今思い返せば、随分失礼な態度だったかもしれませんが、それでも主任は嫌な顔一つせずに私に喋りかけてくださいました。


一方で私は手袋を返すタイミングをずっと窺っておりました。


主任の話しに頷きながら。


あれこれ考えていて注意散漫だったのでしょう。


私は慣れない雪道で、しかもこの日はブーツを履いてきていたので雪に脚を取られ


滑りそうになりました。







「危ない」







倒れそうに傾いた私の体を主任は片手一つで軽々支えてくださいました。


それはいつかの日、脚立を軽々持ち上げ目のくらむような高い場所での電球取替えも簡単にしてしまう“主任”の手でしたが


このときはっきりと


あなたが“男性”であることを改めて思い知らされました。





私はただただ、驚きました。


男性は―――





こんなにも力強いのだと。