総イッカ、私と課長を含めて総勢七名でしたが、実質的なリーダーはあなたでしたね。


課長は定年間近なおじさんで、のんびり屋さんでしたものね。


でもその分あなたがしっかりとしていたので、他の課員の方々もあなたの元のびのびと仕事が出来たのだと思います。


あなたはデスクワークのお仕事の采配も上手でしたが、それと同じだけ手先が器用で力持ちでしたね。


片手で軽々脚立を持ち上げて、非常階段の踊り場の電球を変えたときにそう実感いたしました。


「脚立を押さえてくれるだけでいいから、手伝ってくれないか?」


そう言われて私はもちろん頷きました。


非常階段は外付けの階段で雨ざらしになっているので、電球など割と早く消耗するみたいですね。


高い位置にある電球にあなたは手を伸ばして、複雑な装飾を施してあるカバーを器用に取り外していました。


私なんてその場に座るだけで眩暈を起こしそうな高い場所。


七階と八階の中間地点です。


「こ、怖くないのですか?」思い切って聞いてみると、


「さすがに怖いよ。でも女の子の手前かっこつけないとね」


あなたは素直にそうおっしゃって爽やかに笑っていらっしゃまいした。


私には到底できない芸当でございます。


たとえ目の前に素敵な男性が居ても、その場でかっこつけることなんて無理です。


まぁそんなシチュエーションはないので、心配するには及ばないのですが。


そんな男らしい一面の反面、


「このファックス誰の~?送れてないよ?」と課員の誰かがデスクの群の前でひらひらさせていると、


「あ、僕、僕!」と


勢いよく挙手をしながら立ち上がったあなた。


「お前は小学生か」と課員の方々につっこまれていましたが、


私にはその無邪気な仕草が





とても可愛らしく思えたのです。




不思議ですね。あなたは私の十一歳も年上だと言うのに。


普段は力仕事など一切私にやらせないあなたですが、そう言う気遣いがあって優しい男性ですが


時折子供のようにあどけなく笑うあなたが



いつの間にか愛しく感じました。