『親愛なる鷺澤主任様』






お返事ありがとうございます。


まさかいただけるとは思っていなかったので、



そしてその内容を読んでいただいて、ただ、驚いているわたくしでございます。


まさか主任がそんな風に想ってくださっていたなんて。


傷つけたと仰いましたが、お気になさらず。


こうやってあのときの気持ちを手紙で教えてくださったことに感謝しております。




このような温かく優しいお言葉を


そして可愛らしい手袋をいただけるなんて思ってもみなかったので







その日私はこのお手紙と手袋を抱きしめて眠りました。






夢の中で私と主任、やはり肩を並べあって雪の降る道を歩くのです。


しかしその足跡は



永遠に交じり合うことはなかった。




並行して続くその足跡は



やがてそれぞれ違う道へと別れていきました。




わたくしは主任のお返事を読んで思います。


あのとき、やはりあなたの手を握り返さなくて良かった―――と。




足跡は―――消えたのではなく、別れただけです。






夢の中でも、あの日私の手に感じた冷たいリングの感触のような




雪が降っていました。




雪の中に浮かぶあなたの笑顔。





一生忘れません。






私はその思い出を胸にこれからも生きていける。





あなたの望む強くて温かい






雪中花のように―――







ああ、





黒雪中花の香りが今も鼻腔をくすぐっている。


きっとこの手紙から




香ってくるのでしょうね。










『美雪 麻衣子』






~END~