願わくば
僕が君の手を暖める男でありたいと
バカな夢を一瞬でも抱いてしまった。
君は僕の妻を“黒水仙”のよう、と例えたけれど、妻が黒水仙なら君は
水仙だ。
水仙の別名は「雪中花」
可憐でたおやかで、この手で簡単に手折ることのできる繊細な花。
でもその一方で
雪の中でも春の訪れを報せてくれる、力強い花なのだそうです。
君は冷たい冬も経験したが、その先には必ず春がやってくる。
いずれ君を温めてくれる人は必ず現れる。
それまで君の手が凍えないように、僕が君にできることと言えば
君に似合う手袋を贈ることだけです。
気に入らなかったら捨てるなり燃やすなりしてくれて構わないです。
最後に僕のせいで君を傷つけ「退職」まで追い詰めてしまったことを深くお詫び申し上げます。
そのことに対して君は何も気負うことはないです。
それこそこんな手紙一通でお詫びすることをお許しください。
僕も君に
出会えて良かった。
楽しいひとときをありがとう。
また会う日まで
お元気で。
さよなら。
“鷺澤 充”