長々と語ってしまい申し訳ございません。


でもあなたのことだからきっと律儀に最後まで目を通してくださるのだろうと、図々しくも思ってしまいます。


わたくしがこの手紙を書いたのは、主任であるあなたがわたくしの本当の辞職の理由を聞かずして、


納得いかないかと思ったからでございます。


いえ、最後まで読まれても納得いかないかもしれません。


「そんな理由で？」とお思いになられるかもしれませんね。


それだけならまだしも、わたくしを偏狂的で頭のいかれた女かと思われるかもしれません。


それでも構いません。




わたくしは―――


想いも伝えられず、まるで溶けてなくなってしまった恋心をどう消化していいのか分からないのです。


実際のところ思い悩んで体調を崩しているふしもありました。


いいきっかけなのかもしれません。


今では、こうしてお手紙を書くまでに回復いたしました。


この手紙はわたくしの単なる自己満足かもしれません。


こうしてわたくしの想いを打ち明けても、あなたにとっては迷惑だけかもしれません。


ですのでわたしくのこの手紙はつまらない女の戯言だと思って、


読み終わったあとは破るなり燃やすなりしてくだってかまいません。






わたくしが主任に抱いた気持ちは、まるで雪のように美しく儚いもの。






まるで夢のようなひとときを過ごさせていただきました。


わたくしは主任と出会えて良かったと思っております。


あなたはわたくしに恋をする喜びを教えてくださり、また


新たなる路を一人で歩くことを何も言わずとも導いてくださいました。





さようなら。





私の初恋の人。






勝手に恋をして申し訳ございませんでした。


そして別れを手紙一通で済ませようとする軽率さをお許しくださいませ。





どうかお元気で。







追伸



あなたがなくした右手の手袋、遅まきながらお返しいたします。





『美雪 麻衣子』