私があなたの右側を好きだった理由。


それはあなたの左手薬指に光るリングを目に入れたくなかったからです。







最初から知っていました。


隠されていたわけでもないし、奥様のお話はときどき他の課員から


そしてあなた自身の口からも聞いていましたし。


それでも私は見ないフリをしたかった。





だからあのとき見た雪の路の先は



真っ白でまっさらだったのです。






あなたを好きになっても決して未来がないことを―――



気付いていたのに見ないフリをしていたのは私。







そしてあなたからは“奥様”が愛用している香水が香ってくる。



エキゾチックでどこか蠱惑的な



黒水仙を思わせるその香水が似合う女性は





その香りが似合う



まるでヴェールを被ったような夜空のように美しい黒髪と、この降りしきる雪のように白い肌を持つ






美しく魅惑的な女性だと。