私は相変わらずあなたの右側を歩いておりました。
後ろを振り返ると、積もったばかりの深雪に私とあなたの二人分の足跡がくっきりと残っていました。
離れることなく一定の距離を保って。
その距離を縮めたい。
そんなことを想っているときでした。
あなたは前触れもなくふいに私を引き寄せ、
驚いて目を開いた私をいとも簡単に反対側に促しましたね。
「そっち。道路側だから。危ないよ」
いつになくぶっきらぼうに言って、私はぎこちなく頷きました。
さりげない優しさにまたも胸が高鳴り、
引き寄せられてまたも距離が縮まり
私は
身の程もわきまえずに
あなたにさらに近づきたいと思ってしまったのです。
あなたの左手の甲にコツン…と右手をあわせてみました。
触れるだけの………
あなたは無言で私を見下ろしてきました。
そしてまた去年のこの日、嗅いだ覚えのあるあの神秘的でエキゾチックな香りがふわりと香ってきて
同時に私の指の関節に
雪よりも冷たい感触を覚えました。
それは
あなたの左手薬指にある
プラチナのリングです。