一言で言い表すのならば


『神秘的』でしょう。


神秘的…なんて私には縁遠い言葉ですが、あのとき確かにそう思ったのです。


まるであのときの空を彩る深い夜のような、それでいて舞い散る雪のように儚いような。


どこかエキゾチックな重みのある香りに


くらりと眩暈をおこしてしまいそうでした。



でも



私はその香りに気付かないフリをしました。



私はバカな女です。




このとき、たった一言


「良い香りですね」


そう聞いていれば、こんな風にはならなかったのに。


その問いかけにあなたはこの香りがどんなものかお教えくださっただろうに。






だってあればレディースものの香りだった。







あのとき私たちの辿ってきた雪の路には二人の足跡がくっきりと残っていました。


一定の間隔を保ちながら。


それが突然距離を縮め、でもその先には―――




真新しい雪が被った路しか広がっておりませんでした。


暗に未来はないのだと、この路が物語っていたのでしょうね。







こんな風とは?そうおっしゃるのならお答えいたします。









あなたを






好きになってしまいました。