あゆみside

びっくりした。まさか、涼くんが『幸せ?』なんて聞くなんて。

幸せ?さぁ、私にも分からない。
蓮にぃのことは、好き…。でも、恋愛感情として…?

分からない。私には、小さい頃から好きな人がいた。

………涼くんだ。

ずっと、好きだった。ぶっきらぼうで、意地悪な涼くんだけど、私が怪我したらおぶって私の家まで連れて帰ってくれた。
私が遅れていたら、立ち止まっては、後ろを見ながら私がついてきていることを確認しながらゆっくり歩いてくれた。


そんな、優しい涼くんが私は好きだった。
でも、中学生になってからは、話さなくなった。蓮にぃは、廊下ですれ違う時に話しかけてくれたが、涼くんとは、話さなかった。

卒業するころ、蓮にぃに告白された。


私は、蓮にぃと付き合い始めた。よく言えば、新しい恋をするために…。
悪く言えば、涼くんを忘れるために蓮にぃを利用したのだ…。


あれから、6年後。私は、涼くんと再会して、2年、そして今に至る。

私が借りた、涼くんの服は少し大きい。
その服からは、涼くんの匂いがした。私は、袖口を鼻に当て、深く息を吸った。

なぜか、涙が出そうだった。
私は、涼くんにバレないように、上を向いた。

「…あゆみ?」
「ん?」
「寝よっか…。ベッド使っていいから。」
「涼くんは…?」
「俺は、ソファーでいい。」
「だめ、一緒に寝よ?」
「はぁ…。あのな、俺だって、男なんだぞ?」
「いいから。一緒にっ…。」

寝よ?っという言葉は、涼くんによって妨げられた。

涼くんは、私をキツく抱きしめた。
涼くんからは、服と同じ匂いがして安心した。

「涼く「あゆみ、好きだ。」」

キスされた。こんなにも幸せなキスは、初めてだった。

涙が溢れ出た。次から次へと、溢れ出た。