「………。」
「………ねぇ。」
「なに?」
「ケンカの理由聞かないの?」
「別に、話したくなきゃ話さなくていいし。」
「……私ね、蓮くんて呼べないの。気を付けてないと、蓮にぃって言っちゃうの。それでっ…。今日も蓮にぃって言っちゃって、それでっ。怒られちゃったの、今日は帰れって。私、あんなに怒った蓮にぃ見たこと無くって、気づいたら涼くんちの前に……。」
そんな理由であいつが怒るとは思わないけど……。
俺は、泣いているあゆみを慰めながら昔を思い出していた。




俺と蓮は、『東城さんちの蓮くん』『姫川さんちの涼くん』と、親同士も仲が良かったため、俺達はずっと二人で遊んでいた。

そんなある日、君がやってきた。
俺達が6歳、君が4歳だった。


他にも年が同じ子は、たくさんいたのに、なぜか年上の、さらに、男の俺達と居たがった。

俺は、蓮と遊んでいたかったから、あゆみが面倒だった。でも、蓮は、あゆみを可愛がった。いつもそうだ。蓮は、誰にでも優しくて周りを笑顔にする。俺みたいな意地悪野郎とは、大違いだった。

でも、いつからだろう。あゆみを意識し始めたのは。いや…。もしかしたら、初めて会った時から、惹かれていたのかもしれない。

でも、中学生になり、先輩後輩の関係になってからは、話さなくなった。いや、話せなくなった。あゆみは、元々綺麗な顔をしていたから、中学生になってモテた。そんなあゆみを守っていたのはやっぱり、蓮だった。俺達が卒業するころ、あゆみは蓮の彼女となった。


「………んっ!!涼くんっ!!」
「……っあ、あぁ。」
「大丈夫?ぼーっとしてたよ。」
「へっ?…大丈夫。」
「そう…?」
「……ねぇ、あゆみは幸せ?」
「……えっ!?ぅん、幸せ…(ニコッ」
「なんで?」
「だって、涼くんもいるし、それに蓮くんがいるから(ニコッ」
「……だよなぁ、蓮がいるもんなぁ。」
「なんか、言った…?」
「別に…。」

俺には、あゆみを幸せには出来ない。