午後11時を過ぎた頃、君はやってきた。



「はぁ…。どしゃ降りだなぁ。」

俺は、風呂にも入り、のんびりとしようと思い、ビールを持ってソファーに座りテレビを付けた。


ピンポーン

チッ、誰だよ。はぁ…、めんどくせ。

「はいはい、どちらさまー…?」

「………。」

あぁ、もう!!
ガチャッ

「はぃ…、あゆみっ。……どうした?」
そこには、ずぶ濡れの君が立っていた。

「………。」
「はぁ…。まぁ、入れよ。風邪引くぞ。」
「……ぅん。ありがと…。」
……?なぜか、入ろうとしない。

「どうした?」
「床…。濡れちゃう…。」
「いいから、風呂入ってこい。着替えは、置いておくから。タオルの場所分かるよな?」
「うん。」

君は、なるべく濡れない用につま先立ちで入っていった。
俺の服の中から、あゆみでも着れそうなやつを選び、脱衣場へ持って行き、床を拭いた。

なぜ、あんなに濡れているかが俺には分からなかった。いや、こんな雨の中歩いて来たから濡れたのだろう。しかし、今日は、あいつ…、蓮と出掛けてるはずだった。取りあえず、蓮に電話しとくか…。


俺は、床を拭き終わり、蓮に電話した。
「………ガチャッ。はいはーい♪蓮でぇす!!」
酔ってやがる。
「もしもし、俺だけど、あゆみが家に来たんだよね。どうすんの?」
「あはは…。やっぱり、涼輝のとこ行ったかぁ~。んじゃ、泊めてやって♪よろしくー☆」
「は!?ちょっ、まっ……。チッ、切れたし。」

珍しい、過保護なくらいあゆみを可愛がってるくせに。何があったんだ…?


「涼くん…?お風呂、ありがとう。」
「ん?ぁ、いや…。でさ、今日どうする?蓮は、泊めてやってって言ってたんだけど、帰る?」
「………泊まっちゃだめ?」
「いゃ、いいけど。」
「ありがとう…。」
「…で、何があった?今日は、蓮と一緒のはずだったろ?」
「……うん。さっきまで、一緒だった。でも、ケンカしちゃって…。」
「なんで、俺んちなの?」
「涼くんに会いたかったの…。」
「……はぁ。まぁ、いいけど。」

俺は、前にあゆみが来た時に飲み残したカシスオレンジを渡した。俺じゃ、甘くて飲めないからな。
「ありがとう…。」
「いーえ。」