「・・・・・智樹も辛いと思う。 でも、千夏も辛かっただろうね。 親友に『自分の好きな人と寝てくれ』って頼むのは」
加奈子が眉間に皺を寄せながら、視線を落とした。
「・・・・・・分かってるなら赦してやれよ、広瀬の事」
「アンタ、ワタシをどんだけ鬼だと思ってんのよ。 千夏が号泣しながら謝ってきたから赦してやったわよ」
加奈子・・・・・広瀬を号泣させたのかよ。
「・・・・・ひでぇな、オマエ」
「ワタシだってショックだったの!! 親友にあんな事言われるなんてさ。 なんか『ヤリマン』って言われてる気がしてさ。 いくら智樹の事が好きだからってさー。 千夏が切羽詰ってたってゆーのも、必死だったって事も分かってたけどさー」
言いたい事言い切ったのか、加奈子はいつもの『サバサバ加奈子』に戻りかけていた。
・・・・・・・加奈子はこうでないとな。
「・・・・・・智樹はさ、ホントのトコロ千夏の事どう思ってんの??」
加奈子は広瀬の親友。 でも、オレとの付き合いももう7年になる。
加奈子は、オレの広瀬に対する気持ちに気付いているのカモしれない。
「・・・・・・智樹さ、車椅子になった事に悲観して、好きでもないのに自分を好きだって言ってくれる千夏で妥協しようとしてない?? そーゆー考え方、否定はしないけど・・・・・。 でも千夏はワタシの親友だからさ・・・」
本当は、加奈子はこういう考え方をする人間が大嫌いだ。
サバサバしていて、いつだってハッキリものを言う加奈子が、最大限にオレを気遣っていた。
「・・・・・・・・千夏がね。 『関屋さんがワタシを好きじゃない事くらい分かってるんだよ。 でも、ワタシが好きだから傍にいたいんだよ』って言っててさ。 ・・・・・ワタシはいつでも千夏の味方だし、いつだって応援するけどさ・・・・・見てて切ないんだよね」
広瀬はどうしてオレに直接話してくれないんだろう。
加奈子の口から聞いただけで嬉しいと思うのに。
広瀬から聞けたなら、オレは広瀬を好きになるかもしれないのに。