加奈子の言っている事のワケが分からない。





「『ワタシじゃダメだ』って。 『関屋さん、加奈子を抱きたいと思ってたんだよね?? 加奈子だったら、もしかすると』ってさ」





加奈子の言葉に血の気が引く様な怒りが込み上げる。





広瀬は加奈子に、オレが『不能』な事を話したんだ。





「・・・・・最低だな。 広瀬」





「ホントにね。 親友にそんな事頼むなんて普通じゃない」






・・・・・・違う。





オレはそんな事に怒っているワケではない。






「・・・・・・広瀬はどんな風に面白おかしく、オレが出来なくなった事を加奈子に話したん??」






溜息と一緒に笑いが零れた。






人は、怒り過ぎると笑うらしい。







「・・・・・・はぁ?? 千夏が患者の個人情報バラすワケないでしょ」






加奈子は、広瀬よりむしろオレにイライラしている様だった。






「じゃあ、何で加奈子は知ってるんだよ。 広瀬から聞いたんだろ??」





「違う。 智樹が事故って車椅子になったって聞いた時、そうなるカモなって思ってた。

智樹、ウチラが屋上で話してた事全部聞いてたワケじゃないんだね。

あの時千夏に聞いたんだよ。 『普通にセックス出来ないカモしれないよ。 いいの??』って」





オレの知識が足りなかっただけだったんだ。





広瀬が何も言わなくても、加奈子は分かってたんだ。






「・・・・・・・・広瀬は何て??」






「『だって、もう好きになっちゃたんだもん』だってさ」






加奈子がフッと笑った。





広瀬は、オレをバカにするどころか、ちゃんと想ってくれていた。