「・・・・もう用事済んだんだろ?? 出てけよ」
広瀬から顔をそらした。
「済んでませんよ。 リハビリし「千夏ちゃん発見ー!!」
広瀬の言葉を遮って、誰かが勝手にオレの病室に入ってきた。
「瞬くん。 今日検査の日?? てゆーか、勝手に人様の病室に入って来ちゃダメじゃん」
「だって、ドア開いてたから。 もー、異動したってゆーから探しに来ちゃったよー」
広瀬は、オレの怒りを関係なしに瞬とやらと喋りだした。
「お前らいい加減にしろよ!! 2人とも出て・・・・・」
2人に視線を向けると
瞬とやらの左足が、膝から下が無い事に気付いた。
「こんにちは。 関屋智樹サン」
瞬が松葉杖をつきながら、オレのベッドに近づいてきた。
「・・・・・なんでオレの名前・・・・」
「あぁ。 病室の前に名前書いてあるじゃん」
人懐こそうなその少年は、足の事など気にも留めていない様子だった。
なのに、オレの目線は少年の足に行ってしまう。
その視線に少年も気付いた。
「オレの足気になる?? イケメンの少年がかかり易いという骨肉腫になって4年前に切り落とした」
そう笑う瞬に
「若い男子がなる場合が多い病気だけど、イケメン限定じゃないっつーの」
広瀬が笑いながらツッコミを入れた。
「トモは??」
人懐こすぎだろ。 何親しげにオレを呼んでんだ、コイツ。
だいたい、瞬とやらはオレより年下だろうよ。
「・・・・・・事故った」
瞬に病気の事を言わせてしまった負目。
思い出したくもないから、口に出さなかった事をボソっと零す。
「やられた方?? やった方??」
「やって、やられた」
「ふーん。 自爆テロか」
オレにとっては立ち直れないくらい重大な話を、瞬は軽々しく笑いに変えようとした。
瞬のブラックジョークは、多少イラっときても怒る気にはならなかった。
だって、コイツには足がない。
コイツにはきっと、オレの気持ちが分かる。
コイツはどうやって乗り越えたんだろう。