翌日、広瀬はいつも通り病室にやって来た。
『振られたら気まずい』なんて嘘だったようだ。
広瀬は普段通りシゴトをしている。
そりゃそうだ。 振られたくらいでシゴトに支障をきたす程、広瀬だってコドモではない。
・・・・・と言うか、ショックを受ける程付き合ってない。
たった1日だし。 キスどころか手さえ握っていないのだから、付き合ってたとも言い難い。
「おはようございます、関屋さん。 体調いかがですか??」
まるで何もなかったかの様に広瀬が挨拶をしてきた。
ちっともショックを受けていない様子の広瀬。
・・・・・危なかった。
瞬の勘違いを真に受けなくて良かった。
やっぱり、広瀬はオレの事など好きではなかった。
「・・・・別に。 いつも通り」
広瀬が普通だから、オレも至って普通に返事をする。
「・・・・・・主任に話してみましょうか?? ワタシ、極力関屋さんの病室に入らないようにしましょうか」
広瀬はオレと視線を合わせることなく、少し乱れた布団を整えながら言った。
「・・・・・なんで??」
「・・・・・・ワタシが病室に来るの、嫌かなと思って・・・・。 と言うか、ワタシがちょっとしんどくて・・・・。 『関屋さんに拒否られた』って主任に言えば来なくて済むかなーと・・・」
広瀬が無意味に布団の皺を伸ばす。
ひたすら布団を擦り続ける広瀬とは、やっぱり目なんか合わない。
「自分のワガママは通るハズもないけど、患者のワガママなら通るもんな。 ・・・・・オマエ、考え方がことごとくクズだな」
酷い言い方。
でも、広瀬の態度が気に入らない。
を、通り越して最早嫌悪しか抱かない。