・・・・・モヤモヤする。
車椅子で動ける様になって
病室にいると一人でイライラしそうな気がして
外の空気が吸いたくなって
初めて屋上に上がってみようと思った。
1人で初めてエレベーターに乗る。
屋上に着くと、ベンチに座って缶コーヒーを飲む広瀬がいた。
隣には加奈子がいる。
「千夏が智樹と付き合うとはねー。 ビックリしてシフト代わってもらって来ちゃったじゃん」
興奮気味に加奈子が喋る。
加奈子はショップ店員をしている。
『シゴトが忙しい』と言っていたくせに、よっぽどオレと広瀬の事が気になったんだな。
しばらく2人の会話を盗み聞きしてやろうと死角に入る。
「智樹はイイヤツだけど、トモダチにはお勧めしないなー。 超女好きだし。 特に千夏には手出されたくなかったわ。 アンタ今まで男に浮気されまくってきたしさ」
言いたい放題だな、加奈子。
そして、オレは別に手など出していない。
「・・・・・でも、状況が変わったし・・・・・もう浮気とかもしないカモね」
加奈子が複雑な表情で苦笑いを浮かべた。
歩けないオレに、浮気など出来るハズがない。 という事なのだろう。
怒りに似た悔しさが湧き出る。
「・・・・・ホッとしたの」
ポツリ、広瀬が零す。
「・・・・ん??」
「・・・・・関屋さんに今後好きな人が出来て、浮気しそうになった時、阻止出来るだろうと思ったの。 車椅子って、行動範囲がどうしても狭まっちゃうでしょ。 今度こそ、泣かずに済むんじゃないかって思った。 ・・・・・ワタシ、最低でしょ」
広瀬が俯く。
「そんな事ないよ」
加奈子が広瀬の頭を撫でた。
広瀬は、『オレが歩けない』から好きになったんだ。