「トモ、サボってんのちゃんと見えてるから」





課題をしながらも、瞬はしっかりオレを監視していたらしい。





つーか、考え事をしていてつい動きを止めてしまっていただけで、サボっていたワケではない。





「・・・・瞬は、どうやって立ち直ったの??」





どうすれば前向きになれるんだろう。





どうしたって答えが見つからない。





歩けなくなってから、不可能なことばかり考える。





人生が、つまらない。





違う。






人生が、辛い。






「千夏ちゃんのおかげ」





瞬が、課題をしていた手を止めた。





「広瀬??」





「そう。 オレも病気になってから相当荒れたよ。 もうさ、人生終わったなーって思ったもん。 なりたい職業にも就けないだろうし、恋愛とかも無理だろうなーって」





瞬も同じだったんだ。





「でもさ、千夏ちゃんが言ったの。『瞬くんの夢はパイロット?? お医者さん??』って」





「何、それ」






「『足を切ってしまったら、なれない職業は確かにある。 でも、足があったって視力の悪い人や高所恐怖症の人はパイロットにはなれないし、血が苦手な人はお医者さんにはなれない。 みんな、自分の出来る範囲で色んな事を諦めながら夢を探してるんだよ。 足があったって、好きな人に振り向いてもらえない人間なんか五万といるんだよ』ってさ」





「・・・・・そんなんで納得出来るか?? フツー」






オレだったら逆に腹が立つ言い分だ。






「『出来る範囲で夢を見つけて、いっぱい勉強して、良い職業について、イイ女見つけてみなよ。 足がない事が逆に『足がないのにスゴイ』って賞賛されるから。 足のあるヤツなんか一瞬で見下せる。 最悪、無理だったら全部『足がないせい』にしちゃえばいい。 足がない事は逆手にも取れるし逃げ道にも出来る』って。 千夏ちゃんらしいでしょ」





瞬が『別に足がある人らを敵視してたワケじゃないんだけどね、オレは』と笑った。





「やるだけやろうと思った。 ダメだったとしても、千夏ちゃんの言う通りオレは最強の『言い訳』を持っているから」






「・・・・・広瀬の口車に乗せられただけじゃん」






瞬が病気になったのは4年前。 






まだ10代のガキを丸め込むなんて、広瀬にとっては容易い事だったのだろう。