「智樹に何かされたら、即刻ワタシに言うんだよ、千夏!!」
加奈子は肝っ玉母さんの様に、広瀬の肩を『パシン』叩くと、『ワタシ、用事があるら帰る』と病室を出て行った。
突然来たかと思えば、帰り方も唐突。
加奈子はどこまでもサバサバだ。
「じゃあ、ワタシもシゴト戻るね。 関屋さん、リハビリ頑張ってクダサイね」
なんだか少し元気を無くした広瀬も、ナースセンターへ戻って行った。
「・・・・・トモに千夏ちゃんはあげらんないな」
瞬が溜息交じりに白い目をオレに向けてきた。
「だから、別にいらないよね」
正直、瞬の変な勘繰りにこっちだって白けてんだよ。
「・・・・・・あっそ」
更にどっ白けの瞬。
・・・・・の態度が気に食わねぇ。
「大体、瞬が掠りもしない変な勘繰りするから、あんな変な言い方になったんだろーが」
「・・・・・だから『あっそ』て。 てゆーか、ヒトのせいかよ」
初めてカモ。 イラつく瞬を見るのは。
瞬はイライラしながらも『トモ、早く乗ってよ』と車椅子をベッドに寄せた。
なんだかんだ、オレのリハビリの監視は辞めないらしい。
瞬と一緒に病室を出る。
ナースステーションの傍を通ると、なんだかまだ他の看護師たちと馴染めていない様に見える広瀬がいた。
居心地悪そうな広瀬は、点滴に名前を書いたり、淡々とシゴトをしていた。
ナースコールが鳴ると、優しい声を出して患者に安心感を与えながら状態を聞きだす広瀬。
広瀬が、一生懸命働いていた。