「瞬くん、義足は??」
車椅子を押しながら広瀬が瞬に尋ねる。
「今までのヤツが背伸びて使えなくなってさ。 今日新しいヤツ試すの。 だからオレも今日はリハビリルームで練習。 つーか、別に義足使わないからいらないんだけどなー。 親とか兄ちゃんがうるさいんだよねー。 『普段つけなくてもいいから、一応義足で歩く練習しとけ』ってさー」
『オレの足はコレでいいのに』と瞬が松葉杖を軽く持ち上げて見せた。
「なんで義足しないんだよ」
瞬はオレと違って義足を着ければ歩ける。
膝上パンツでも履かない限り、片足がない事を誰かに気付かれる事もない。
なのに、なんで??
「オレって、こう見えてモテたりすんの」
瞬は、整ったどっちかっていうと可愛い寄りのイケメンだ。
モテるのも分かる。
「義足してた時さ、オレの足の事知らない女のコに告られたりとか結構してたんだよ。 で、そのコらに足の事話すと、それはそれは変な空気になったり、妙に気遣われたりすんだよね。 だから最初から足がないアピールしてた方が楽だなーって。 それでも好きって言ってくれるコがいいなーって」
きっと片足がなくとも瞬はモテるのだろう。
それくらい、瞬には魅力がある。
生意気で自分勝手な所も瞬の魅力。
だって、瞬は強くて優しい。
いつまでも塞ぎ込んでは当り散らすオレとは大違い。