瞬の家族が医師の話を聞きにオペ室を離れて行った。





すると、今度は千夏がサヤ子さんに近づいて行った。





「サヤ子センパイ!! すいませんでした!!」





勢い良く頭を下げる千夏。





「どーした?? 急に」





サヤ子さんは、優しい笑顔で千夏の頭もワシワシ撫でた。





「瞬くんのオペ、行くの遅くなってしまって・・・・・」





「・・・・・・不謹慎なんだけどさ、ワタシね。 もう1回広瀬や奈々とシゴトが出来て嬉しかったよ。 遅くても、来てくれてアリガトネ」





サヤ子さんは、怒るどころか充実感でいっぱいらしい。





「ワタシも久々にサヤ子と働けて嬉しかった。 今日は無理言ってゴメンね。 アリガトウ。 あ、広瀬さん。 瞬くんはワタシが病室に連れてくからあがって。 残業してくれてありがとね」





主任さんが千夏とサヤ子さんに近づいて来た。





主任さんも千夏を責めようとしない。






「・・・・・・叱ってくれないんですか??」





千夏が下げていた頭をゆっくり上げながら2人を見た。





「・・・・・サヤ子、広瀬さんってMなの??」





「ウチラの事、鬼だと思ってるんじゃん?? ウチラ、反省して謝ってる人間を叱るような事しないのにねー。 なんか、心外ですねー、奈々さん」





主任さんとサヤ子さんが顔を見合わせて笑った。





「違います!! 尊敬してますから!!」





千夏が焦った様子で両手を振りながら否定する。





「嘘くさー」





それでも細い目で千夏を見る主任さん。





「奈々、広瀬いじめてないでいい加減瞬くん病室連れてって」





サヤ子さんがそう言って笑うと、主任さんが『そうだった』と笑い返して瞬を連れて病室に向かって行った。