サヤ子さんを睨むと、サヤ子さんもオレを睨み返して、すぐ千夏に視線を戻した。
「手術が終わって、瞬くんの意識が戻って、『広瀬が手術に手を貸してくれなかった』って知った時、瞬くんはどれだけ残念に思うだろね」
サヤ子さんが、悲しそうな顔で千夏に言い聞かせる。
「サヤ子!! 何してんの!?? 早く!!」
主任さんが戻ってきてサヤ子さんを急かした。
「今行く!! ワタシ、先行くから!! 待ってるから絶対来るんだよ、広瀬!!」
サヤ子さんは千夏を掴んでいた手をそっと離すと、オペ室へ急いだ。
・・・・・と、思ったらクルっと振り返り
「安田!! 絶対大丈夫だから」
両手で頭を覆って混乱している瞬の兄ちゃんに声をかけた。
サヤ子さんは、多分サヤ子さんの声など聞こえていないだろう瞬の兄ちゃんに笑いかけて瞬の元に早足で去って行った。
千夏が慕うサヤ子センパイは、優しくて強い。