「瞬くんッッ!!」
1番最初に反応したのは、サヤ子さんだった。
「瞬!! 瞬!!」
階段を駆け下りるサヤ子さんを、錯乱する瞬の兄ちゃんの肩を抱きながら青山が追った。
「千夏!!」
振り向くと、千夏が震えながら立ち尽くしていた。
「広瀬、ヘルプ呼んで!! 早く!!」
下からサヤ子さんが叫んでいる。
「千夏、早く!!」
千夏を急かすが、千夏は手も足も震えていて動こうにも動けない。
「千夏、PHSドコ??! オレがかけるから!!」
千夏からPHSを貰おうとするも、遂に立ってもいられなくなった千夏は、その場にへたり込んでしまい、車椅子に座った状態のオレの体制では千夏のポケットを探れない。
「広瀬!!」
そうこうしてる間に、サヤ子さんが階段を駆け上がってきた。
千夏を見かねたサヤ子さんは、何も言わずに千夏のポケットを探った。
「・・・・・・目が・・・・合った。 瞬くん・・・・・『ばいばい』って
・・・・・口のかたちが・・・・・『ばいばい』・・・・だった」
千夏は、落ちる寸前の瞬の声を聞いていた。
サヤ子さんは千夏をチラっと見たけれど、耳を貸すことなく千夏のPHSで助けを呼ぶと、また階段を駆け下りて行った。
数人の担架を持った看護師がすぐに駆けつける。
「サヤ子!??」
『主任』のネームプレートを付けた看護師がサヤ子さんを知っている様だった。
「奈々!! 早く!!」
『3・2・1!!』階段の下で、看護師たちが手際良く担架に瞬を乗せている。
看護師たちが瞬を乗せた担架を持って、階段を上って来た。