それから龍くんとは口を聞いていない。
時々出かけるタイミングが一緒で
玄関先で会ったりはするけれど、
彼も私もお互いに
話しかけることはない。


私の場合、勇気がないから
話しかけることができなくて。
でも、頭ではあの時から
毎日龍くんのことばかり考えていて。
言葉では言い表せないこの気持ちを
誰にも言うことができなくて
なんだかもどかしい。


「「「きゃ~!」」」


そんな私の考えは、
女の子たちの黄色い歓声に遮られた。


わかってる。
いつものことだ。
彼が来た。