「おい…」

「おい…!」

ん?
誰か私のこと呼んでる?
いったい誰が…?

「……おい!!!」

「え…え…?!」

私はハッとなり飛び起きた。

私の目の前に誰かが立っていたので
見上げてみると…

「おい、てめぇ」

私の前に立っていたのは男子。

ワックスで盛った髪、耳には数個のピアス、
首には十字架のネックレス、いかつい目で
ものすごく怖い…

こっち睨んでるー…
目怖すぎだって。

私は目に涙を浮かべて、震えた。

「おいって!」

「え、な、何…?」

「そこさ、俺の特等席。どいて」

「は、はいっ!」

私はそそくさと
寝ていたところからどいた。

そして
その男子は私が寝ていた所に寝転がった。

今何時だろ。

携帯を開けて、時間を見た。

「えぇ!!?」

あれから二十分くらいたっていた。

初授業を一時間目からさぼっちゃった…。

「なぁ」

「はいっ……!」

「アンタも授業サボり?」

「え、えっと…
サボるつもりはなかった…けど」

「へぇ。まぁいいや。
何年?」

「一年…」

「あぁ~、じゃあ俺の方が一つ上だな。
一年でサボりって度胸あんな」

「だから、サボりってわけじゃなくて。
ちょっと嫌なことがあって、
屋上に逃げてきて、それで…」

「寝ちゃったってわけか」

その人は大笑いした。

めっちゃ笑いが怖いんだけど…

「あ、アンタ名前は?」

「え、あ、安堂 美嘉…」

「美嘉かぁ。
見かけによらず可愛い名前だな」

私を見て微笑んだが

私には悪魔の笑いにしか見えず

「ひゃっ!」

思わず後ずさりしてしまった。

「どうした?」

「え…いや、その…」

「あぁ、俺と話したくなかったか。
悪いな。もう話さねぇから」

その人は黙ってしまった。

私…悪いことしちゃったかな…?
あの態度はさすがにまずかったよね。
私の男性恐怖症なんて知らないわけだし…
こ、怖いけど一応謝んないと…

「あ…あの」

「何だよ。
俺となんて話したくなかったんだろ。
俺に近寄るな」

「ご、ごめん。
そうじゃなくて、正直にいうと私…
男性恐怖症で男の人が苦手っていうか…
…怖いんです。それで…」

そのことを話した瞬間
その人は驚いた顔をしたが
あとから嬉しそうな顔になって
起き上がると私に近づいてきた。

「えっ?!な、何?!」

「俺も女が恐怖症なんだ!」

「えー!!?」

「いや~、俺ってさこう見えて
中学ん時女子にいじめられててさ
それがトラウマで、高校では隣の席が女だったら
ここにサボりに来てんだ」

「そ…そうなんだ」

「同じようなトラウマかかえた子に会えて、
マジ嬉しい!
美嘉は何故か怖くねぇんだよなー。
これからも
仲良くやろうぜ!」