晃希はだるそうに、




「いーじゃん。俺朝苦手だし。モテるかは知らねー。てか俺片想い中だって言ってるじゃん?」




と言った。




「だから誰か教えてっていつも言ってるのに!」




「そーだよ!協力できるのに!」



私と奈保は言い返すが、



「だから、言わねーっつの!お前らじゃ絶対役に立たん!」



晃希にはいつもスルーされてしまう。





「はー!?むかつくー!」





「やっちゃえ奈保!」




奈保がぺちん、と晃希の頭を叩く。



「あっ!何すんだよ暴力女ー!」




晃希も軽くやり返す。




これがいつもの光景。




晃希の好きな人が奈保だったらなっていつも思う。




そしたら4人でダブルデートできるもんね!






そして日は経ち、日曜日。



今日は透とデートの日だ。




朝からウキウキして準備をする。




服はどれにしようかな♪ 髪は巻こうかな? メイクは…遊園地なんだしあんまり濃いのもね…など、色々と考えた。




とにかく楽しい気持ちでいたんだ。




そしたら透から、メールが来た。




"ごめん、今日ダメになった!"





え…?




ドタキャン?





気分がぐんぐんと下がって行くのが分かる。今までのウキウキは逆転、どんよりとした気分だ。




しかもこんな短文。




なんでダメになったかって理由もないし…







…あ、ダメだ。




考えてたらなんだかモヤモヤしてきた…



イライラする気もする。




だめだめ!




私は重くなった頭をぶんぶんと振る。




きっと何か急ぎの用が出来ちゃったんだよね!




だからだもんね!




「……はぁ。」





自分に言い聞かせるけど、何だかスッキリしない。




「…気分転換に散歩でもしようかな?」




そう思って、私は家を出た。




…このせいで、あんなものを見ることになるなんて思ってなかった。









近くの駅の洋服店に着いてウィンドウショッピングをしていると、近くから聞き覚えのある声がしてきた。





「え~♡これ可愛い~♡」




「おお、買ってやるよ」




…ん?この声は…




嫌な予感がしたものの、勘違いであれと思いつつ、恐る恐る振り向く。




ーーー!




私の目に映ったのは反対側のお店で透が知らない女の子と腕を組んで買い物をしているところだった。





私の頭は一瞬思考停止した。



え…え?どういうこと?




私とのデートを断って、この子と遊んでるの…?




私よりこの子が大事ってこと…なの?




じっと見ていると、こっちを振り向きそうになった。




慌てて側にあったマネキンの後ろに隠れて、様子を伺う。




なんだか透、私といるときより楽しそう…





…これって、浮気…なのかな…





…。





そ、そうだ!メールしてみよう、メール!




私は携帯を取り出し、透にメールをした。




"今どこにいるの?"





送信!






浮気じゃないよね。
きっとあの子は……なんか、なんかあるんだ。きっと理由を説明してくれるはず。




様子を見ていると、透はメールに気が付いたようで、返信を打っているのが見えた。





~ピロン♪





きた!





ドキドキしながら受信メールを見る。





"今は家。お袋が寝込んでて。"





ーーーー!!





嘘、ついた…。




信じたくない現実が突きつけられた。



透は浮気をしてる。





透は私を裏切ったんだ…




ヒドイよ、透…



私、信じたのになぁ…



見ていられなくなって、私はその場を離れた。








家に帰って、ベッドに倒れこんだ。





何も考えられない…考えたくない…




まさか透に裏切られるなんて、思ってなかった…




ぶわっと、涙が溢れ出す。




「う…ううっ…透…グスッ…」




私、初めて付き合った人が、透なんだよ?




透のこと、信じてたんだよ?





すごくすごく、好きなんだよ?





透はもう私のこと、好きじゃないのかな?




そんなことが、頭の中でぐるぐる周り続けた。









奈保に相談すればよかったけど、そんな余裕もなくて。ただなんだか悲しくて…





ちゃんと話せる気がしなくて。




一日中暗い気持ちで過ごした。





明日、透にちゃんと確かめよう。





また泣いちゃうかも知れないけど…





怖いけど…





聞かなくちゃ、いけないよね。





不安で不安で、この日はなかなか眠れなかった…







翌日、いつものように登校すると、奈保と透が楽しそうに話していた。





私が近づいていくと2人とも気が付いて、





「おはよう未空っ!」





「未空おはよ!昨日は悪ィな!」





と、話しかけてきた。





「お、おはよ…透、お母さんの具合どうなの?」




私はぎこちない表情で透に話しかける。





「ん?ああ、もう大丈夫!ありがとな!」




ニコッと笑う透に、嫌悪感を覚えてしまった。




いつもならキュンとくる笑顔なのに。




こんなにさらっと嘘つくんだって。いつもと同じ笑顔だからこそ嫌だった。





透のこと、信じられなくなっちゃう…




私は覚悟を決めて、透に話しかけた。




「あ、そうなんだ。よかった…。…ねぇ、今日話したいことあるの。放課後空いてる?」




「おお、空いてるよ。放課後な!」





「うん、放課後…」