「…」
「…」
何も聞いてこない…。
私が話すのを待っててくれてるんだ。優しい人だな。
私が黙っていると話す気はないと思ったのか、「じゃあ…」と去ろうとする水草くん。
「ま、待って!」
「?」
「あの、あのね!」
私は水草くんに今までのことを全部話した。今思えば対して仲良くもない水草くんに何で話したのかと思うけど、
奈保や晃希に相談できない苦しさも吐き出したかったんだと思うんだ。
私が話している間、水草くんは相槌以外は何も言わなかった。
話を聞き終えると、そっか…と呟いて、続けた。
「桐上くんは…立切さんのこと大好きなんだと思う。それは学校でみてても思うし。それに堀くんもさ、何か理由があるんだと思うよ。立切さんが見た一瞬だけで決めつけるのは良くないよ。」
私の目をみて話す水草くん。その目からは真剣さが見て取れた。
普段会話しない私にいきなりこんな相談されたのに、受けとめて真剣に返してくれる水草くんに安心を覚えた。
「元気出して、立切さん。」
水草くんはそういうとニコッと微笑んだ。
「うん、ありがとう…!水草くんのおかげでだいぶ楽になったよ!」
「ほんと?それはよかった…。あ、じゃあ俺も、立切さんに話す。」
「え?」
水草くんは目を少し伏せ、頬を赤らめた。
「俺さ、久宮さんのこと好きなんだ。」
「ええ!?」
ほんのり赤かった頬を真っ赤にしている。
本当に好きなんだなって思わせられた。
名前を口にしただけで真っ赤になるなんて今時そうそういないよ?
にしても、水草くんが奈保のことをね…意外かも。あの2人のペアか…
「…うん、お似合いだよ2人!水草くん、応援するからね!」
「ありがとう。頑張るよ。」
また優しい顔でニコッと笑い、恥ずかしそうに視線を逸らした。
その後少し雑談をして、私たちは別れた。
家に帰って、自分の部屋の椅子に座り、くるくると回りながら色々なことを考えてみた。
今日はいろんなことがありすぎた。
透、奈保、晃希、朝場さん、水草くん…
一日で色々起きすぎて、頭がついていかなそうだ。
とりあえず今1番気になるのは透と奈保のこと。
どうして2人でいたんだろう?
くるくると回るのを止めて、考えてみる。
…ううん、考えても答えはでない!
奈保に直接聞くのが1番いいよね!
そう思い、携帯を鞄から取り出し電話をかけた。
プルルルル
3コールほどで奈保は電話に出た。
『…もしもし?』
「もしもし奈保?」
『ああ、未空…』
?なんか、元気がない…?
気になった私は、用件を伝えるより先に奈保に質問をした。
「奈保、どうかした?」
『…別に。で、何の用?』
奈保はぶっきらぼうに答えると、質問で返してきた。今日の奈保はなんだか冷たいな…
「あー、あの。今日どうして透といたのかなと思って!」
少し明るく言うと、
『.....』
奈保は黙り込んでしまった。
「奈保?」
私が問いかけると、
『…何、彼女面してるの?』
いつもより低い声が返ってきた。
突然のことに驚いた私は、どもってしまった。嫌な汗が噴き出す。
「え、あ、奈保…?」
私が焦っている時にも、奈保は変わらない調子で話し続けた。
『透と私が2人でいようと未空には関係ないじゃん。』
ズキ
関係ない、と言われたらそれはそうかもしれないけど…
でもら気になったんだよね…
奈保は少し間を置くと、さっきより大きな声で言った。
『私はずっと、透のことが好きだったの…!!』
「ーーーえ?」
『気づかなかった?ま、そりゃそうだよね。私必死で隠してたんだもん。未空と透が付き合ったって聞いた時はすごく辛かったよ。でも未空ならって…親友が幸せならって、諦めたんだよ。』
奈保は少し声を震わせながら一気に話した。
「奈保…」
私が言葉につまっていると、奈保は更に続けた。
『なのに…未空は、透をフった。…チャンスだって思った…。透もきっといつか未空を諦めて、私を見てくれるかもって、考えた。』
奈保はすでに、泣いていた。
『透に隙があるとしたらここだって思った…未空が側にいない今なら、透の心を引き寄せられるかもしれない。私を見てくれるかもしれないって…だから、2人で会いたかったの…』
「奈保…」
私は何も知らなかった…
いつでも隣にいて、支えてくれていた親友が、こんなにも苦しんでいたなんて。
しかもその苦しみの元凶が私だなんて。私がずっと、苦しめていたんだ…奈保は誰にも相談なんかできず、ずっと耐えていたんだ…
私はそんな思いをさせていたことを謝りたくなった。
「奈保、ごめ」
ん、と言おうとした時、奈保が少し声を荒げて『謝らないでよ…!』と私の言葉を阻止した。
私が何も言えずにいると、今まですすり泣いていた奈保が深呼吸をする所のが電話越しに聞こえてきた。
『未空…』
「うん…」
私は次の言葉を待った。
『透とのこと、曖昧にしないで。』
「!」
奈保の言葉が、胸に刺さった。
『透のことが本当に嫌なら、もっとちゃんとフればいいのに…はぐらかして。未空のそういうとこ、ムカつくよ…ズルいよ…』
「あ…」
本当だ。私、ズルい。
『もう切るね。』
奈保は私の返事を聞かず、一方的に電話を終えた。
私は今の話をもう一同考えてみた。
奈保は透のことが好き。しかもずっとずっと前から…
私は気付かず奈保を苦しめていた…親友失格かもしれないな…。
じゃあ私がもし透を完全にフったら?奈保と透がうまくいったとしたら?
奈保のことが好きな水草くんは、また辛い想いをするの?伝えてもいないのに、片想いをし続けるの?
どうして誰かが辛い想いをしなきゃいけないの…?
「…って。」
ここまで考えていたら、勝手に声が漏れた。
「これじゃあ奈保と水草くんのせいにして、逃げてるだけじゃん…」
はぁ、と一つため息をついた。
私って本当にズルいな…
こんなの、みんなに失礼じゃん。
だめだ、ちゃんともう一度、向き合ってみよう。
みんなと、自分と。