龍真が止めに入ると、それまで黙っていた瑛が、


ゆっくりと、男子生徒の方へ視線を向けた。



「────ひっ」


「……っ」



龍真も思わず息を飲む。


瑛の紫色の瞳は怒りに燃えているのに、氷よりも冷たく。


相手を、刺すようににらみつけていた。


その手の割り箸は、いつの間にか真ん中から砕けていた。



「……何か?」


「いや、あの、なんでも……」



男子生徒がひるんでこそこそと自分のテーブルに戻る。


瑛は一度瞬きをし、いつもの無表情に戻ると、おもむろに席を立った。



「先輩……!」



食器、置きっぱなしだけど!!


ここセルフだぞ!!


龍真は仕方なく瑛の食器を返却口に返し、自分のカレーを遥か遠くの席にいた神無の前に走っていって、投げ出した。