しまった。嫌われているのに、俺は何をやっているんだ。


瑛が後悔したことに、まりあはまったく気づかない。



「え、えへへ……忘れ物、しちゃいまして」



まりあは情けなく、へらりと笑った。


やはりどこか、緊張したような顔で。



「へえ……」


「あ、あ、じゃあ……」



取り巻きはいなかった。


一人で戻ってきたまりあは、本気で忘れ物をしたのだ。


明日リーダーで確実に当てられるのに、電子辞書を机に入れっぱなしにしてきてしまったことに気づいたのは、ほんの少し前。


瑛に呼び止められたのが予想外で、まりあはマヌケな顔しかできなかった。


どんな顔をすれば良いかわからず、うつむいてしまう。


瑛は何とか話題を提供しようと、必死で言葉を探した。