瑛はまりあの鞄を持ち、玄関に立つ。


怒っていたまりあは、途端に無口になった。


これで、しばらく会えなくなるのだ。


無言でそちらへ行き、靴を履こうとした瞬間。


瑛は、まりあを抱きしめた。



「……ずっと、見ていたいな。

こんな面白いやつ、他にいない」


「……面白いって……」


「消えない痕をつけたいと思ったけど、さすがに無理だから。

それが俺の独占欲の証だと思って、許してくれ」



瑛はそういうと、まりあの首の痕にキスをした。


そして、唇にも。



「……行くか」


「……はい」



顔を離した時には、お互いに微笑んでいた。


こんなに別れが惜しい、愛しい人がいる。


それが幸せだったから。