瑛の舌打ちに、思わず笑ってしまう。


この不器用な人が、自分から浮気することは、まずないだろう。


するとしたら、それは本気だ。



「今度は、いつ会えるかな」


「5月の連休だろ」


「その次は」


「夏休み…か」


「なんだ、意外に会えますね」



努めて明るく言うと、首の後で瑛がふっと笑った気配がした。



「そうだな」


「ね」



『寂しい』って言いたいけど、言わない。


それはお互いに、痛いほどわかっているから。


『やっぱりつきあったりしなきゃよかったね』


それも言わない。


そんなこと、どうしても思えないから。


あたしは今、あなたの腕の中で幸せだから。


だから、切ないけど、我慢するよ。


まりあは、心の中で瑛に語りかけた。