にっこりと笑みを浮かべる男の人があたしが

落とした鞄を拾って差し出してくれた。

「いいえ、初対面ですよ。」

はっきりとそう言った男の人はクスリと笑う。

そ、そっか。それは納得なんだけどモヤヤって

するのは何か夢で登場しちゃった人物と重なってる

せいなのかな?まさかの、正夢に動揺してるのか!?

「そうですか、失礼なことをお聞きしてしまってごめん

なさい。変に思わないで下さいね。」

こうイケメンばかり出てこられるともう驚かない方が

いいのかもしれないな。さすがに免疫付いちゃったか?

ナル君が最近非常に押してくるからな。

鼻血ブーにならなくて良かったと思っとくべきよね。

「あの、これ使って下さい。そのままだと風邪を

ひいてしまいそうだから、返さなくて結構ですし

遠慮はしないで下さいね。」

何か変だなと思ったら顔面濡れてた。

この人の頭上に急に雨雲が発生したのか?

そんな災難も世の中あるんだね。

「えっ?」

「折角のお洋服が汚れてしまってます。

お外晴れてるけど、お気の毒にあなたの頭上では

雨が降ったんですね?それは差し上げます。」

鞄からハンカチを取り出して男の手に持たせる。

「そのハンカチ使ってないから大丈夫です。」

これ、確か持たせてくれたハンカチだ。

花がらのワンポイントがある。

あたしが使ったハンカチはジャケットのポケット

に入ってるからどうやらあたしは2つハンカチを

持ってきてしまったらしい。

「あ、伯父様が待ってますからこれで失礼

させていただきますね。」

ペコリとお辞儀をしてレストランに向かおうと

足を動かしたら急に手に重みがかかった。

「あ、あれ?」

な、何故か手が動かないんですが?

可笑しいなと思って振り返ろうとしたら、

ギュッと手首を掴まれて男の人に見つめられた。

何かなと思いながらハンカチ要らなかったかな

と思って、オドオドしながら見つめ返すといきなり

男の人に引っ張られた。