ナル君が赤色の折り紙を天使の笑みで渡してきた。

飾り作りとか細かい作業は得意中の得意分野。

毎年、永瀬家合同クリスマス会の飾りを作るのも

あたしの仕事だったのである。

テーブルの上に転がっていたハサミを手に取って、

目の色を変えて黙々と切り込みを入れ始めた。

「ヒヨリン、手切らないようにな?」

ナル君は隣で折り紙に苦戦していた。

シャキシャキっとハサミの音がする。

向こうの方では慶詩とユウヤの声がして、

相変わらず不良メンバーズの騒がしい声が

するものの一度ロックオンされたあたしの

機動力には止めるすべがない。

画用紙を手に取ってハサミで切り込みを入れるていく。

「わー、ヒヨリンすげー!!」

ロックオン中のあたしはただ手を動かしながら、

頭の中で出来上がりに合わせて切り込みを入れていく。

「日和ちゃん、器用だとは思ってたけど職人技だね。」

「そんで、集中すると何しても気付かないわけだ。」

伊織君、怪しげなこと考えてるのね!?

「ガードシステム搭載します。」

「ひ、ヒヨリンっ、ろ、ロボットになっちゃヤダ!」

ナル君の怪力に制御不可能のプログラムが!!

「容量オーバー」

シャキッと切り込みを入れた画用紙をヒラヒラと

開いていくと予定通りトナカイとサンタが続いた

シルエットの飾りが出来上がっていた。

「ところで、ナル君はサンタさんにプレゼントを

お頼みしましたか?」

「それが、まだ何だよな。今年は何にしようか

悩んでてまだ枕の下に手紙出してねぇんだ。」

「そうなんですか、あたしはもう1ヶ月前に

枕の下に手紙を入れて置きましたよ。」

「じゃあ、俺も今日中に手紙書く!」

ナル君とサンタさん話に花を咲かせたいた。

「・・・・・(何か、この2人は癒し系なんだけど・・)」

「・・・・・(夢は壊せない・・・)」

切実に思う馨君と京君には気付けなかった。

「呑気なもんだよな~」

伊織君がクッションに顔を埋めながら、

こちらを見て呆れていたのだけはバッチリ確認した。