ウロウロフロアを移動するあたしは不審な人になった気分だった。
不審者はみんなこんな気分なのかしらと思いながら、
コソコソしてたら知らないおじさんがこんにちわと挨拶
してきたからビビって戸惑った。
こ、このおじさんどこかで見たことあるぞ!
えっと、名前が思い出せないよ。
でも、知ってる人なんだよね。
会ったことはもちろんなかったけど、テレビで
よく見るから顔は覚えてるんだ。
とりあえず、会釈してこんにちわと返した。
ゆ、有名人御用達なのか!
「どこのお嬢さんなんだい?」
お、お嬢さんってとんでもない。
「伯父様に着いて来ただけなんですの。
すみません、お待たせしているのでこれで失礼します。」
ふ、ふぅ。
ウロチョロしてる場合でないよ。
早くレストラン戻らないと誰に会うか分からんよ。
不慣れのパンプスを動かして前に歩くと、
ガンっと額を何かにぶつけて尻餅付いた。
ひぇっー!?
だ、誰かにぶつかってしまったパターン来たか!?
慌ててごめんなさいと謝るとクスリと笑い声が
聞こえて顔をあげると驚いた。
「こちらこそ、女の子にぶつかるなんて
失礼なことをしてしまいましたか?」
「いいえ、あたしがタックルしたようなもの
ですからお気になさらないで下さい。」
い、いや~、何だこのイケメン!
ビックリするぐらい顔整ってますぜ。
さ、最近不良メンバーズがイケメン多いから
慣れてきたはずなのになんてイケメンレベルが
高いお方なんだ。
鼻がスッとしてて髪は少し茶色っぽいような色で、
どっかの俳優さんよりもずっとイケメンでパーマが
かかってるのか跳ねてる。
慶詩の跳ね方とは全然違うソフトな感じだ。
何か、不思議だ。
初めて会ったはずなのにどこかで会ったこと
ある人みたいな気がするのは何故だろう?