い、嫌だって思っちゃ駄目なのに!

ガンっと右頬を殴って言い聞かせる。

みんなと一緒に居た方がずっと楽しい。

こんな世界じゃ息が詰まって呼吸すら上手く出来ない。

自由がなくなるって恐怖に思える。

こんなこと今更思ってもしょうがないことだって

分かってるのにイヤダイヤダって駄々をこねる

あたしが心の中に居る。

楽しいことから辛いことに変わる日々が来ると

思うと本当に時間が止まって欲しい。

春になってすぐにってわけじゃないとは思うけど、

少なくても今のように自由には出来なくなる。

よっちゃんたちにドライブ誘われても良いよなんて

言えなくなる日が来ちゃうかもしれないと思うと

寂しくて寂しくて嫌になりそうだ。

こんな我儘が許されるはずないのに口で言っても

心では認めたくないんだ。

「そうだ、この前、パリに言ったんですのよ。

そこの香水がとても良くて皆さんもどうかしら?」

「あら、いい匂いね。」

「パリって良い物がよく手に入るわよね。」

マダムたち特有の話になってからは耳を塞いで

マダムたちが去るのを密かに待った。

随分、長い立ち話だったじゃないか。

同席の人に不審に思われるんじゃないの?

もしかして、お腹痛めたんじゃないかって

恥ずかしいことこの上ないぞ!

うん?待て、待て、それってあたしにも

言えるんじゃないか?

ま、マズイでしょう!!

あたしが席を立ってからどれぐらい経ったんだろう?

もしかしたら、伯父さんがおトイレ長いよ日和ちゃん

って待ってたらは、恥ずかしすぎて顔から火が出るよ。

うげげっ、急いで戻らないとよね!

伯父さんに勘違いされるのも困った話だわ。

日和ちゃんってお腹弱い子とか聞かれた際には

ショックが大きすぎて立ち直れないかもしれない!

それだけは避けないと駄目じゃないのよ。

慌ててお化粧室から出てフロアを歩きまわった。

はて?どこから来たんだっけ?

うわー、こんな時にあたしどこから来たか忘れた?