カフェがある駅は結構大きな繁華街で、その奥にホテル街がある。
来たことはないが、まぁ、この辺りに住んでれば知ってるくらいの数がある。
☆☆☆
「どれがいい?」
暗めのエントランスに、話しに良く聞いた(亮一はこっちが聞きもしないのに、あのホテルは…とか先ずは部屋選びから…とかベラベラしゃべるんだ)部屋を選択するパネルがあった。
「んと…私はなるべくシンプルなら
空が選んでくれていいよ?」
恥ずかしそうにする蒼をもっと見たいって欲求はあるが、時間がもったいないから…
「じゃあ…これでいいか?」
俺が指したのはブルー系の落ち着いた色合いの部屋で、ガチャガチャした感じがない。
「うん…ありがと」
小さな返事を聞いて、パネルのボタンを押し、鍵を受け取った。
鍵には『5F502』と書かれていた。
細めの通路の奥にある、エレベータに乗り五階へ上がる。
正面の壁に504までは右に、505からは左に矢印がでていたから、二人で右へ歩き出す。
肩を抱き寄せて、寄り添いながら。
部屋の前まで来ると、『ゴクンッ』と音がするかってくらい唾を飲み込み、息を吐いてから鍵を開ける。
ドアが内側に開いた瞬間、足元のライトがついて、ほんのりと部屋を照らした。