入学してから1ヶ月ほど経ち、五月晴れのある日。
手を繋いでいつものように歩いて登校する俺達の前に一人の女子、同じ学校のたぶん上級生が立っている。
「あのっ!神木君…話がしたいの…」
通り過ぎようとしたら、そう呼び止められた。
蒼と二人でそちらを見る。
少し赤い顔で緊張してるらしく目がキョロキョロしている。
蒼は黙って立ち止まり手は恋人繋ぎしたままほんの半歩下がった。
俺は仕方なく向き合い「この場でいいなら聞かせてもらう」と言った。
数人…登校中の生徒も横を通る…明らかにチラチラ見てるし。
さあ、どうするかな?
「あ…じゃあ、この、ままで…
えっと、神木君…あたし、2年3組の
佐藤梢(さとうこずえ)っていうの…」
『ふぅ…』と一息はくとまた続けた。
「で、えっと、
あたし…神木君が好きです…
公園のスケボーも
好きで観に行ってたの…」
『なら、俺には蒼がいるって知ってるはず…』
そう内心で思いながら、先を促すと…
「あたしっ、2番目でも3番目でも
それでも神木君と付き合いたいんですっ
お願いっ…彼女にしてくださいっ」
勢いをつけて一気に捲し立てて頭を下げる。
まるで話にならない要求だった。