まず、俺が任されたのはゴミの片付け。
そして蒼は布地などが保管されている部屋の片付け。
これ、俺たちにとったら宝島を探検してるみたいなもんだった。
所員はそれぞれゴミ箱とシュレッダーを持っていて、アイデアが外部に出ないように細心の注意をはらいながら取り扱っている。
そのゴミ箱からゴミを集め全てをシュレッダーにかけ、シュレッダーから取り出してまとめる。
事業ゴミとして袋詰めして、収集のギリギリまで室内で保管し、収集車が来てから一斉に持っていくらしい。
みんなや星野さんのラフスケッチやら、没になったらしいシュレッダーの中のデザインの欠片は、元が分からないものばかりだし、まれに、書きかけてクシャッとしただけのがあっても、今の俺にはそれを『盗む』と言う行為自体が、全く話しにならないほど有り得ないことだった。
そして、そういう自分でいるのを支えてくれてるのが、星野さんや加藤さんの信頼と蒼の存在だ。
ラインの書き方や色の種類などは、知識として自分に取り込もうとはしているが、デザイナーの命が入ったデザインを『盗る』なんてない。
蒼は倉庫を隅からホウキをかけたり棚を拭いたりしながら、珍しい生地を見たりしてウキウキしている。