「それでも、弁当は残さない約束だ。」
「ん…そうだね、じゃさ…
ほんの少し手伝って?ね?」
計算でない、自然なお願いに思わず「あぁ、いいよ」なんて言いそうになる。
「ダメだ…食えよ…」
「うぅ~そらぁ…あ、ね?
この玉子焼きだけでも、ね?
ほらっ、あ~ん…」
玉子焼きを箸で持ち上げて俺の口の前に差し出す。
くそっ……
可愛いじゃねぇか…
「ったく…仕方ねえなぁ、
それだけな?あ…」
少しキツメに言いながら差し出された玉子焼きをパクりと食べた。
「ありがとっ!フフッ」
ここまで会話して、ようやく側にいた中谷さんに視線を向けると、真っ赤な顔で、目を見開き……口を開けて…俺らを見ていた。
でも、俺にとっては大切な昼の時間を奪った嫌なやつと認識されたから、気遣いなんて生まれない。
玉子焼きを飲み込んでから、蒼の箸を取ると、今度は中のウインナーを俺が食べさせた。
蒼はあまり嫌がらずにモグモグっと食べた。
横目でまた中谷さんを確認するとさらにゆでダコみたいに赤くなり、「あっ…し、しつれい、しますっ!!」とようやく側を離れた。
「蒼…」
呼び掛けてから俺は頬にキスをした。
なんだか、無性にしたくなった、だけだが。