それを黙って聞いてた陸也は俺を見る。


「それはお前の思いだろ?
そう言われて、『ありがとう、傍に居る』
なんて、あいつが素直に言うかな…」


陸也の心配も分かった。


自分の体が、俺や俺の将来に悪く働くと思い込み、さらに、それが蒼の苦しみになるのではないかと、言いたいんだろうな。


「でも…それでも…
傍にいたい、いや…居る…
二人で…乗り越えたい」


それからしばらく三人とも黙ったままだったが、蒼の母親が声を出す。


「どんな未来も…まずは蒼の
気持ちを聞いてから…ね?
それまでは二人とも、自分の考えや
思いを口にしないこと、約束よ。」


頷いた俺達は完全看護の病院に蒼を託し、重い気持ちのまま帰宅した。


☆☆☆


俺は今日のことを親に話した。


母親は涙を流して「なんで蒼ちゃんばかり…」と嘆いていた。


「お前たちの未来だ…
外れた事をしない限りは口は出さない」


父親はそう言ってから「試されているのかもな」と小さく呟いていたが、それは俺には聞こえなかった。


俺は一人になると渡せなかった指輪をまた見つめながら考える。


とにかく明日また病院へ行き、蒼に逢いたい…


今はそれだけを思うことにして、あえて深く考えないようにして眠りについた。