高校の担任なんてもっと軽くていい加減かと、決めてかかってた。


だが、川北はこの1年ずっと変わらず俺らを一人一人みてくれて、ラスト、普段偉そうなのに、頭を下げるとか…


驚いて、そして泣きそうになる。


「ばっかじゃねぇのぉ~
川北せんせぇ~、暗いよぉ~?」


亮一だ。


わざと、この湿った空気を吹き飛ばそうと声を出した…少し震えている、気がした。


「酒井~お前なぁ…
バカはないだろうが…
どんな立場にあろうと、感謝は
伝えなけりゃ、しても意味がねぇだろう?」


そういって柔らかい笑顔でクラス内を見回す。


「ん…みんな、良い顔してるな…
2年も楽しみにしてるぞ」


そう言ってから「ほら、解散だっ」と早口に言って教室を出ていってしまった。


「いいせんせ~だったよな…」


誰ともなく、そんな声があちこちから上がりしんみりしてしまったが、またまた亮一が、「カラオケ、行きますかぁ~!」と叫んだことで、それを断ち切りみんな教室を後にした。


「亮一、俺と蒼はパスな…」


「了解♪」


蒼の誕生日だと話しておいたので、スムーズに抜けることができた。


「じゃあ、蒼、駅前に12時な?」


蒼のうちのマンション前で約束を確認して、着替えに帰った。