「来る選挙へ向けて我々もマニフェストってやつを決めなければならないが……どうする?」
「国民が飛び付きそうなものにせねば意味があるまい」
「我々には目玉になる人気者がいないからな……」
「うーん……飛び付きそうなもの……」
「老人に子供、今なら原発か……」
「いやいや、雇用、景気回復だろ!やっぱり」
「いや、消費税だろ」
「減税だな……」
「となると、老人医療・教育費・原発廃止・雇用問題・景気回復・消費税増税ストップからの減税だな!」
「そんなに欲張って並べても逆に信憑性ないだろ」
「そうだよ!そもそも信用されてないんだからな」
「もはや手遅れ感も否めないが……」
「それを言ったら見も蓋も無いだろ」
「とにかくまだ、くっついたばっかりで認知度が無い我々だからな」
「スター選手もいないしな……」
「印象薄くて党名すら覚えられてないだろう」
「てか、俺達の党名ってどんなだったっけ?」
「…………」
「そうだよ!結局何になったんだ?」
「…………」
「そうだ!俺らだって覚えてないんだからさ!いっそ変えようよ!」
「そうだな!」
「そうだよ!」
「そうしよう!そうしよう!」
「で、何にするよ?」
「インパクトがあるやつか覚えやすいものがいいな」
「そうだな……今、旬なワードってなんだ?」
「そりゃやっぱり『脱』だろう」
「そうだ!『脱』だ」
「『卒』なんてのも出てきているが、やっぱり『脱』だろう!」
「脱原発」
「脱増税」
「脱官僚!」
「脱世襲ってのもあるぞ」
「うーん……出尽くしてる感あるな」
「我々ならではの斬新でインパクトのある『脱』は無いのか?」
「うーん……」
「…………」
「脱……政治?」
「それ禁句だろ!」
「そうだ!若者にウケるように『脱・非リア充』はどうだ?」
「ちょっと砕け過ぎちゃいないか?」
「では老人にウケるように『脱・機械化』は?」
「いや確かにそうだけど、もうこの流れは止められないだろう……」
「そうかぁ……実際、進化が過ぎて俺には逆に不便で悲しくなるんだが……」
「…………」
「暗くなるな!よし!子育て世代を狙おう!」
「そうだ!そこを忘れちゃいかんよ!」
「うーん……」
「子育て世代にウケるとなると、やっぱり『脱・増税』『脱・原発』だろう」
「それじゃ他と一緒だしな……」
「『脱・教育費負担』!」
「実際この財政難ですべては無理だろう」
「えー……だめ?言うだけなんだからいいじゃん?」
「…………」
「よし!とりあえず皆で『脱』を上げるんだ!」
「脱サラ」
「脱力」
「脱線」
「脱……肛門?」
「それは脱腸!もしくは『ぢ』!」
「脱落」
「縁起でもない!」
「脱毛」
「嫌なこと言うなよ」
「脱税」
「したいよ!」
「脱衣!」
「女子限定でwww」
「いいですなwwその発想に脱帽ですわ!」
「わっはははは~」
「……脱会。俺、この会辞めたい」
「脱臭ってのもありますな」
「あ~もう加齢臭ぷんぷんですからな!実は私、先日娘に……しくしく」
「泣くな!辛いのは君だけじゃない!」
「脱走……逃げ出したい」
「脱色!」
「いいね~!若者ウケ狙ってしてみますか!」
「脱穀機」
「脱脂粉乳!」
「懐かしいな~」
「地獄だ……この地獄から脱獄したい」
「おい!そろそろいい加減にしよう!」
「はい……ごめんなさい」
「テンションが上がっちゃいました……」
「うーん……脱……脱」
「脱……脱……」
「脱却!」
「おっ!なんかカッコイイね!」
「いい感じだ!もう一声!」
「…………」
「……脱皮」
「!?」
「脱皮か……インパクトあるな」
「いいかも!」
「脱皮……脱皮……日本……」
「日本……そうだ!日本は今、一皮剥けて苦しい時から脱皮しなければならない!」
「そうだな!」
「そうだ!そうだ!」
「では『脱皮!日本!』でどうだ!?」
「おお~~」
会はどよめいた。